赦せないあいつと大人の恋をして
噂話
翌日、出勤した私はドアが開いたままの給湯室から聞こえる話し声に足を止めた。
「ねぇ、そういえば秘書課の早崎 綾って知ってる?」
「あぁ、副社長秘書の早崎 綾?」
「あの品行方正が服着て歩いてるって感じの?」
「そうそう。それがね、私、昨日見たのよ」
「何を見たのよ?」
「早崎 綾が迎えに来た男の車に乗って行くところをよ」
「えぇ? あの浮いた噂一つない早崎 綾に男いたんだ」
「それが誰だと思う?」
「誰よ?」
「ほら、四年くらい前まで家の営業に居た、遊び人の……」
「もしかしたら、菅田 龍哉のこと?」
「そうそう。営業成績はトップだったけど女の噂の絶えなかった」
「赤いスポーツカーで迎えに来てたの?」
「それがね、白い普通のセダンだったのよ。だからすぐに分からなかったの」
「会社辞めて、今、何してるのかな?」
「さぁ、何してるんだろう」
「そういえば、営業に居た……。ほら妊娠して田舎に連れ戻された」
「あぁ、えっと、彩花……春野 彩花」
「そうそう。彼女のお腹の子の父親が菅田 龍哉じゃないかって」
「あったあった。でも本当のところ、どうなんだろう」
「さぁ、それは春野 彩花にも分からないんじゃないの」
「そうよね。新宿とかで会うと、その度に違う男だったもの」
「何? 春野 彩花並みに遊んでるとか?」
「違うわよ。私は、ちゃんと彼と一緒だったわよ」
「長いわよね。結婚しないの?」
「実は来年の秋くらいの予定なの」
「そうなの。おめでとう」
「あぁ、私も結婚したい」
「相手は?」
「居たら、こんな事、言わないわよ」
「そういうことね。さぁ、仕事仕事」
私は慌てて見られないように陰に隠れた。
給湯室から聞こえて来た話声に私は聞き覚えもなかった。OLの噂話。数日で会社の女子は誰もが知っている噂になる。昨日、見られてたんだ。あいつの車に乗るところを……。
品行方正が服着て歩いてる、浮いた噂一つない早崎 綾……か。
もう迎えには来ないでと言わなきゃいけない。変な噂は立てられたくない。でもそんな余計な心配はしなくても良かった。その後、あいつの方から私の前に現れる事は一度もなかった。
「ねぇ、そういえば秘書課の早崎 綾って知ってる?」
「あぁ、副社長秘書の早崎 綾?」
「あの品行方正が服着て歩いてるって感じの?」
「そうそう。それがね、私、昨日見たのよ」
「何を見たのよ?」
「早崎 綾が迎えに来た男の車に乗って行くところをよ」
「えぇ? あの浮いた噂一つない早崎 綾に男いたんだ」
「それが誰だと思う?」
「誰よ?」
「ほら、四年くらい前まで家の営業に居た、遊び人の……」
「もしかしたら、菅田 龍哉のこと?」
「そうそう。営業成績はトップだったけど女の噂の絶えなかった」
「赤いスポーツカーで迎えに来てたの?」
「それがね、白い普通のセダンだったのよ。だからすぐに分からなかったの」
「会社辞めて、今、何してるのかな?」
「さぁ、何してるんだろう」
「そういえば、営業に居た……。ほら妊娠して田舎に連れ戻された」
「あぁ、えっと、彩花……春野 彩花」
「そうそう。彼女のお腹の子の父親が菅田 龍哉じゃないかって」
「あったあった。でも本当のところ、どうなんだろう」
「さぁ、それは春野 彩花にも分からないんじゃないの」
「そうよね。新宿とかで会うと、その度に違う男だったもの」
「何? 春野 彩花並みに遊んでるとか?」
「違うわよ。私は、ちゃんと彼と一緒だったわよ」
「長いわよね。結婚しないの?」
「実は来年の秋くらいの予定なの」
「そうなの。おめでとう」
「あぁ、私も結婚したい」
「相手は?」
「居たら、こんな事、言わないわよ」
「そういうことね。さぁ、仕事仕事」
私は慌てて見られないように陰に隠れた。
給湯室から聞こえて来た話声に私は聞き覚えもなかった。OLの噂話。数日で会社の女子は誰もが知っている噂になる。昨日、見られてたんだ。あいつの車に乗るところを……。
品行方正が服着て歩いてる、浮いた噂一つない早崎 綾……か。
もう迎えには来ないでと言わなきゃいけない。変な噂は立てられたくない。でもそんな余計な心配はしなくても良かった。その後、あいつの方から私の前に現れる事は一度もなかった。