赦せないあいつと大人の恋をして
約束
　東京湾の海の幸をいただいて
「すごく美味しかったです。ごちそうさまでした」
　お店を出て、お礼を言った。

「どういたしまして。綾さんと一緒に食事出来るだけで、僕は充分幸せですから」

　二人で、また車に乗って隼人さんは
「もう少し時間いいですか？」

「はい。大丈夫です」

「でも遅くなるのはマズイですよね。何時くらいまで構わないですか？」

「遅くなり過ぎなければ。子供じゃないつもりですけど……」

「あれ、女子高生じゃなかったかな？」
　と笑顔で言われた。

「もう、いいかげん卒業したいんです。子供っぽい自分から」

「子供なんかじゃないですよ。とても魅力的な大人の女性だと思います。初めて会った時、この人なのかもしれないって思いました。僕の傍で、いつも優しい笑顔で居てくれるのは……」

「私、隼人さんが思っているような女じゃないかもしれないですよ」

「そんな事ないですよ。僕がそう感じたんだから自分の直感を信じます」

「あの……。隼人さん、私に聞きましたよね。今まで結婚を意識した人は、いなかったのかって」

「はい」

「同じ質問を隼人さんにしてもいいですか？」

「そうですね。どうだったかな。具体的に、この人って決めた事は無かったかな。あぁ、そうだ。子供の時、中学生くらいだったかな。遠縁の女の子に大きくなったらお嫁さんにしてって言われて……。じゃあ、君が大人になっても僕が結婚していなかったら、その時にね。確か、そんな約束をしたような……」

「その女の子は何歳だったんですか？」

「幼稚園の制服が可愛い子でしたよ」
　と笑った。

「じゃあ、十歳くらい年下の女の子だったんですね。そろそろ本当に大人になって、お嫁に来ちゃいますよ」

　なんだか可愛くて微笑ましくて……。大人になった今のその子を見てみたいなんて思った。

「さっきの質問。真面目に答えると……。今まで結婚を意識した人は正直言って居ませんでした。仕事が忙しかったっていうのは言い訳になるんでしょうけど。でも僕は今、綾さんとの将来を真剣に考えてます。綾さんのように聡明で綺麗な人が傍に居てくれたら幸せだろうと思います」
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