赦せないあいつと大人の恋をして
大切な想い
 二十歳の思い掛けない訪問者と向かい合って座っていた。テーブルに置かれたミルクティーをひと口飲んで

「それで、隼人さんとは……」

「子供の頃から、よく遊んで貰ったり……。家族ぐるみで親戚付き合いさせて貰ってました。今もですけど」
 ちょっとだけ挑戦的な目で私を見た。

「隼人さんが好きなのね。いつから?」

「子供の頃から好きでしたけど、男性として意識したのは高校一年の時です」

「ミカさん、大人なのね」

「でも隼人さんは私をいつまでも子供だと思ってます」

「隼人さんとは、九歳違うのね」
 何気なく言ったら

「年齢なんて関係ありません」

「そうね。確かにそうだわ。それで、ミカさんは隼人さんに自分の気持ちを伝えたの?」

「いいえ。隼人さんは何も知りません」

「だったら、ちゃんと伝えなきゃ。後悔したくないから私に会いに来たんでしょ?」

「でも……。いいんですか? 私の気持ち隼人さんに話しても」

「良いとか悪いとかじゃなくて、そうすべきだと思う。このまま一生後悔するより……。正直に伝えて、それで駄目なら諦めもつくんじゃないかしら」

 私はミカさんにではなくて、二十歳の時の自分自身に言っていた。後悔ばかりして来た私の恋愛。好きだって、その一言が、どうしても言えなかった。傷付くのが怖かった。

「ミカさんの告白と私のお見合いは、別のものだから。隼人さんにミカさんの今までの想いをきちんと伝えなさいね」

「はい。ありがとうございます。早崎さん」

「あぁ、綾でいいわよ。きょうからミカさんとは友達だから」

「ありがとう。綾さん。すごく悩んだんですけど、やっぱり来て良かった」
 ミカさんは、目の前に置かれたミルクティーにやっと手を伸ばした。思い詰めたような表情が、明るく二十歳のお嬢さんらしい顔に変わった。

 隼人さんが受け止めてくれるのかどうかは私には分からない。そう思って、もしかしてミカさんが可愛い幼稚園児? そうなのか。九歳の年齢差。隼人さんは初恋の人なんだ。

 でも大切な想いは言葉にして言わなければ相手には伝わらない。ミカさんのお陰で私も気付いた。そんな、ごく当たり前の事に……。
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