赦せないあいつと大人の恋をして
寒い季節の結婚式
次の日曜日。大学時代の友人の結婚式に招待されていた。
待ち合わせしていた友人 井上 麗佳(いのうえ れいか)と会うのも久しぶり。最寄の駅から二人でタクシーに乗って会場に着いた。
そこは、瀟洒な建物の洒落た雰囲気のレストラン。こんな寒い季節に結婚式に招かれた事は今までなかった。麗佳の話では今時の言い方の授かり婚。春まで遅らせたら、お腹が目立ってきてしまうからだそうだ。でも何にしてもおめでたい事に変わりは無い。
会場に入ると美しいウェディングドレスに身を包んだ優菜(ゆうな)の姿が。
「優菜、おめでとう。すごく綺麗よ」
「ありがとう。来てくれて。寒かったでしょう?」
「大丈夫よ。それより優菜の体調の方が心配よ。平気なの?」
「悪阻の真っ最中なんだけどね」
「気分が悪くなったら無理しないでね」
「うん。ありがとう」
招待客が、それぞれ新郎新婦と挨拶して席に着いた。私は麗佳と同じテーブル。他には優菜の会社の同僚らしき女性が数人。久しぶりに会う麗佳と近況などを話していた。麗佳もまだ独身。当分結婚の予定などないと言っていた。
「綾は? 付き合ってる人くらいは居るの?」
「う~ん。どうなのかな。私も予定はないわよ」
その時、何気なく見た新郎と笑顔で話しているのは……。先輩?
「ねぇ、麗佳。新郎と今、話しているのって先輩?」
「えっ? あぁ、そうね。そうよ。先輩だわ。川村 雅也先輩」
「でも、優菜のご主人、大学の先輩じゃないわよね」
「うん。確か大学は違うって言ってたと思うけど……」
「じゃあ、どうして先輩がここに居るのかしら」
「さぁ、ちょっと聞いて来る」
麗佳は先輩のところへ行った。新郎と話して席に着こうとしている先輩を捉まえて
「先輩。お久しぶりです。覚えてますか?」
「あぁ、えっと……」
「麗佳です。井上 麗佳。先輩、本当に覚えてます?」
「あぁ、ごめん」
「綾も来てるんですよ」
「えっ? 早崎 綾?」
「もう先輩、綾は覚えているんですか? 嫉妬しちゃうな」
「そろそろ始まるから、後でな」
「はい。先輩」
まもなく、お式と披露宴が始まった。
私は先輩も気になったけれど、優菜の体の方が何より心配だった。