赦せないあいつと大人の恋をして
結婚の意思
　そうなんだ。お見合い。私は隼人さんとお見合いしたんだ。気軽に友達として付き合っている訳じゃない。結婚を前提として真剣に将来を考えて付き合わなきゃいけない。

　優菜の結婚式に出席して結婚もいいなと思ったのは確かだけれど。だから今すぐ自分が結婚するというのは現実には考えられない。

　父は、ゆっくり考えろと言ったけれど……。どのくらいで結婚する意思を固める必要があるのか分からない。

　兄の友人の延長線上に結婚があるのだろうか？　私が結婚の意思を固められなかったら……。兄と隼人さんの友情にも差し障りがあるのだろうか？

　食事を終えて店を出た。駐車場まで歩きながら隼人さんが、そっと腕を出した。とても自然に出された腕に手を添えた。コートの上からでも隼人さんの温もりが伝わって来るようだった。

　このまま二人で寄り添って生きて行くのも素敵な事だと思えた。きっと幸せになれる。そんな気がしていた。

　隼人さんと結婚する。それは何を基準に決めればいいのか良く分からない。

　この人と、どうしても一緒に居たい。離れていたくない。私の人生には、どうしても必要な人だから。好きだから、愛しているから……。

　それが分からない。私には、そういう感情が欠落しているような気がする。

　幸せそうな二人を見ると私まで幸せで温かい気持ちになれる。私が誰かと居て周りに幸せそうだと思われる事があるのだろうか。

　考え過ぎなのかな……。

　恋愛って頭で考えるより気持ちで行動してしまう。抑えられない程の衝動なのだろう。きっと……。

「どうしました？　さっきから黙り込んで」

　赤信号で停まった車の運転席で隼人さんが言った。

「あっ、ごめんなさい。考え事をしてて……」

「僕の事を考えてくれてたなら嬉しいけど」

「隼人さんは結婚したいと思いますか？」

「したいですよ。素敵な人と。綾さんみたいな可愛い人とね」

「私が結婚に向いていると思いますか？」

「そうですね。きっと結婚にも仕事と同じように向き不向きがある。そう思いますけど。綾さんは結婚に興味がないんですか？」

　隼人さんに聞かれて私はすぐに返事が出来なかった。
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