赦せないあいつと大人の恋をして
隼人さんの想い
「正直に言います。今はまだ現実に自分の事として考えられないんです。いつかは私も結婚するのかなっていう漠然とした気持ちはありますけど」

「いいですよ。そのいつかまででも僕は付き合います。綾さんが迷惑でなければですけど」

「でも……。いつになるのか自分でも分からないのに……」
　そう。私は自分の気持ちすら良く分からない……。

「僕を好きにさせてみせます。って言ったら自信過剰だって笑いますか？」

　隼人さんは今きっと素敵な笑顔をしている。そう思った。隼人さんの顔も見られないまま……。

「いえ、そんな事……」

「綾さんと一緒に居ると、とても穏やかな気持ちで居られるんです。同じように僕が綾さんを癒してあげられたらと思っています。僕も今年は三十歳になります。でも結婚って年齢じゃないですよね。結婚したいと思う人が現れた時が適齢期なんだと思います。男として綾さんを守っていけたら僕も幸せだと思うんです。僕の傍で綾さんが生涯ずっと笑顔でいてくれたら最高に幸せです」

「……。私なんかでいいんですか？」
　隼人さんなら他にもっと素敵な人が、いくらでも居そうな気がした。

「僕は綾さんが良いんです。お見合いという形で会いましたけど、それだって出会いの一つだと思います。もっと早く、お兄さんに紹介して貰えば良かったと後悔してます。今すぐ結婚するかどうか答えを出して欲しいなんて言いません。無理強いするつもりもありません。綾さんが自然に僕を好きになってくれて……。その先に結婚があったら……。それで僕は満足です」

　何も言えなくなってしまった。この人は器の大きな人なんだと改めて思わされた。ただ優しくて素敵なだけじゃない。大きな愛情を持っている人なんだ。
　隼人さんと結婚したら……。きっと幸せになれるんだろう。でも、それでいいんだろうか……。
< 59 / 107 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop