赦せないあいつと大人の恋をして
萎れた一輪挿し
 急に自信がなくなっていった。龍哉に愛されているという自信は今朝の夢のせいで、まるで萎れた一輪挿し。

 明日は私の誕生日。でも誕生日なんて、もうどうでもいい。

 龍哉の本心が知りたい。私以外の女性とまだ付き合っていたりするのか。今でも寄って来る女性と親しくお付き合いしているのか?

 セフレ……。体だけの付き合い。私には信じられないような事が世の中には普通に存在する。そういう事に経験値がなさ過ぎる私には理解出来ない。

 私が一人で思い悩んでも答えは出て来ない。龍哉に確かめなければ……。そんな簡単なこと分かってる。


 今、何時だろう? 枕元の携帯を見た。九時半を過ぎてる。いつまでもぐだぐだ眠ってるから変な夢を見るんだ。起きよう。着替えて遅い朝食。ブランチを楽しむ気持ちの余裕は今朝の私にはない。

 じっとしていると次から次へと嫌な妄想ばかり膨らんで……。

 何も考えなくて良いように洗濯、掃除、近くのスーパーへ買い物。おまけに誰が食べるのかロールキャベツをお鍋いっぱい作って。洗濯物をしまってアイロン掛けを済ませて、やっと日が暮れた。

 ただ夢で見ただけの事で、こんなに動揺している自分が情け無かった。龍哉の過去の女性なんて数えたら切りがないだろう。そんな事すら乗り越えられなくて龍哉と付き合ってはいけない。ますます自信がなくなって行く。

 その日、一日中ふと頭の中を過ぎるのは……。龍哉が愛おしそうに抱きしめていた白い背中……。
 
 現実に存在するのか分かりもしない女性に嫉妬している。自分でもバカだと思う。それでも私の妄想は止められなかった。

 こんな時、私はつくづく恋愛には不向きな性格なんだと思ってしまう。有るのかどうか分かりもしない事を思い巡らせて落ち込むなんて……。

 早めに夕食を済ませて、作り過ぎたロールキャベツを小分けにして冷凍した。いつもより、かなり早めにお風呂にも入った。

 龍哉から明日の予定のメールが入るはずだ。

 それでも、お風呂上りのほかほかの体は、もう眠くなってきている。まだ九時。ベッドに入って眠ってしまいたい。でも、また夢を見るのも嫌だった。どうせなら龍哉との楽しい夢を見せてくれればいいのに……。
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