赦せないあいつと大人の恋をして
過去の女
「会社の子と付き合った事はないの?」

「ないよ。会社は仕事をするところだ。女の事でごたごたしたくない」

「じゃあ、どうして遊び人だって言われてたの?」

「飲みに行って街で拾った子と短いお付き合いしてたからな。その時その時で連れてる女が違ってたからだろう。きっと」

「その日に会ったばかりの女の人と……。簡単にそういう関係になれるの?」

「酔った勢いというか、向こうも最初からそのつもりだから……」

「信じられない……」

「俺が?」

「良く知らない人とそういう事になって平気な女の人の気持ちが……」

「いくらでも居るよ。肉食系女子なんて。綾みたいなお嬢さんには理解出来ないと思うけど」

「愛してないのに抱けるんだ……」

「愛してないから、その日だけなんだろう。本気だったら、また会いたいし抱きたいと思う」

「…………」
 やっぱり私には分からない。たとえ酔っていたとしても、好きでもない人と……。そういう気持ち……。

「また黙った」

「だって……」

「綾には刺激が強過ぎた?」

「そういう考え方が分からないだけ……」

「分からなくて良いよ。綾は綾なんだから。そのままで良い」

 私は、また黙り込んでしまった。龍哉も黙ってる。何を考えているんだろう。街でお近付きになった歴代の女性の事でも思い出してるの? そうだとしたら……。嫌だ。他の女の事なんて思い出さないで欲しい……。

 嫉妬? 龍哉の過去なんて知りたくもないのに……。

 しかも私の誕生日に。なんだか悲しくなってきた……。そんな事を考えさせる龍哉も龍哉だ。でも聞いたのは……私。聞きたかったのも……私なんだ。
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