妖しく溺れ、愛を乞え

 ◇

 次の日はお休みで、午前中からふたりで出かけた。
 車が無いから、そんなにたくさん買い物できないけれどね。

 とても良い天気で、すがすがしい。もう少しで梅雨入りする季節。南の方ではもう梅雨入り宣言が出ていた。来週は東北も梅雨入りしそう。

「夏掛け買った方が良くない? 夜たぶん暑いと思うよ」

「そうだなぁ。じゃあホームセンター行くか」

 それだと、少し電車に乗らないといけないな。駅前にホームセンターが建っている町があるんだ。

 まぁいいか、今日はゆっくり行って買い物するんだ。

「持ちきれないだろうから、配送頼もうよ」

 駅へと向かう道すがら、あたしはそう提案した。

「レンタカーでも良かったなぁ」

「いいよ。深雪が面倒じゃないなら、電車で行こう」

「俺は別に歩きでも構わない。楽しいし」

 深雪の体が少し心配だったけれど、具合が悪くなったら休んだり、どうしようもなくなったらタクシーで帰ったりしよう。無理はあまりしない方が良い。健康体じゃないんだから。

「食器とかは? 家具とか」

「それはあるので良いよ……」

「テレビいらない?」

「いらない! あるから無駄遣いしない」

「そうかー」

 この調子じゃ、車を買おうとか言い出しそう。それはまぁ、必要に駆られればね……そのうちね。貯金で足りるかしら。

 電車に揺られながら、聞いた。

「お昼どこで食べようね」

「そうだなーなんか脂っこくないものが良いよな」

「おそばとか」

「いいんじゃない?」

 ホームセンターが建つ一角に、複合施設もあり、その並びに飲食店もあったはずだ。そこで良いかな。


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