妖しく溺れ、愛を乞え
 ホームセンターに到着すると、買い物客で賑わっていた。
 寝具、カーテン、バス用品……いろいろなコーナーを見て回る。

「思ったんだけどさ、人間界に居たなら、家具持って移動すれば良いのに。もったいないじゃない? いちいち買うの」

 今回は会社で用意して貰っているけれど。

「家は一応あるし、人間界では賃貸だし、家具も無くたって良いし、邪魔なんだよ。移動する時は始末したりそのままにしたりするから」

「……へんなの」

 本当、変なヤツ。変な妖怪。

「お、これ良いよ。買おう」

 バス用品コーナーで、深雪が手に取っているものは背中を洗うブラシだった。

「いらないよ、そんなものー」

 タオルでこすれば良いし! なんでそんなものに興味を示すの。

「えー便利じゃないか?」

「タオルあるでしょ。余計なもの買わない」

「そうかなー」

 そうだよ。

 夏掛けを買い、深雪が気に入ったクッションを買った。ソファーにおしゃれなクッションとか欲しいなぁ。無かったもんな……まぁそれは良いか。
 配送を頼んでしまうと、まだ身軽だったから、他にも欲しいものが出てきてしまいそうだった。

「雅は、なにか欲しいもの無いのか?」

「あたしは食品類が欲しい、帰りながらスーパー行きたい。あとドラッグストア」

「じゃあ、いま……昼過ぎたし、飯にしようか」

 店内の時間を見て、深雪が提案する。

「そうだねー。お腹空いたよね、たくさん歩いたし」

「うどん屋あるから、あそこは?」

「賛成」

< 107 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop