妖しく溺れ、愛を乞え




「……腕が抜けそう」

「俺も」

 洗濯洗剤にシャンプーやリンス、スーパーに寄って食材を買い込んだ。ふたりで腕をプルプルさせながら帰宅した。

「力でなんとかならないの? 軽くするとか、腕がもう一本生えてくるとか」

「人前でそれはちょっとな……」

 やっぱり、車が必要かもしれないね。

 夕方、少し早めだったけど、あとは洗濯をして干さなくちゃ。今朝はできなかったからなぁ。雨は降らない予報だし、いまから干しておけば一晩で乾くだろう。
 洗濯機のスイッチを入れて、リビングに戻る。

「ちょっと汗かいちゃったね。お腹空いたし、あ~ビール飲みたい!」

「1本どう?」

 夜には少し早い時間だけれど、でも、飲んじゃおうかな。

「深雪もどうぞー」

 よく冷やされた缶ビールを2本取り出して、1本彼に渡した。

「荷物たくさん持ってくれてありがとう。重かったでしょう。おつかれさまー」

「雅も。おつかれさん」

 カンッとぶつけて、ぐいっとビールを流し込んだ。ああ、生き返るようだわ。

「あー! 美味しい!」

「俺、シャワー浴びてくるよ」

「うん。夕食の支度してるね」

 バスタオルを持ってバスルームへと向かう深雪を横目に、冷蔵庫から今夜の材料を取り出した。

 野菜を切りながら、豚肉と鶏肉どっちが良いかなと考える。
 深雪はどっちが良いだろう。あたしは鶏肉が好きなんだけれど。野菜と炒めて、中華味にして。疲れたから味噌汁も作ろう。野菜炒め定食だ。デザートにプリンも買った。

 おしゃれな料理じゃなくても、美味しいねって一緒に食べてくれる存在が居るだけで、美味しさは倍増すると思うんだ。

 あ、お米を研がないと。高速炊きですぐだよね。



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