妖しく溺れ、愛を乞え
結局、鶏肉の野菜炒め、ネギの味噌汁を作った。簡単だから早く出来てしまった。ご飯ももうすぐ炊けるだろう。
ソファーに座り、テレビを見ていた。
CMになったので、立ち上がって炊飯器を見た。保温になっている。準備は万端だ。お腹空いたなぁ。
深雪、ずいぶん長いシャワーだ。お風呂を溜めて入っているんだろうか。ふと、心配になる。声をかけてみようか。
バスルームへ行くと、シャワーの音が聞こえる。
「深雪? ご飯できたよー」
曇り加工がされた中折れ扉をノックする。
「深雪?」
ザーザーという音以外、聞こえない。動いている様子も無い。まさか。
「深雪? 開けるよ」
そっと、扉を開けてみた。
「……あ!」
そんなに広くないバスルーム。湯気に包まれて深雪が壁にもたれて目を閉じていた。
「深雪! どうしたの、また具合悪いの?」
「……っ」
裸で、苦しそうに胸を押さえている。あたしは濡れるのも構わず、服のまま深雪のそばへ寄った。否応無しにシャワーが服を濡らす。手を伸ばして、それを止めた。
「深雪! 出よう。ベッドに行こう!」
バスタオルを体にかけると、腕を肩にかけて支えた。自力で立てるだろうか。自分よりも体格の良い深雪をおんぶなどはできない。
「……がんばって、支えてるから、立って」
「み、やび。ごめ……」
「いいから、寄りかかって」
力を振り絞るようにして深雪は立ち上がり、あたしに掴まった。重い……重いけれども、ベッドへ連れて行かないと。
「ゆっくり、ゆっくりでいいから」
服も床も濡れていく。そんなの気にしていられない。寝室はもうすぐだ。
ゆっくりと部屋へ行き、ベッドにドサリと倒れ込んだ。濡れた体を拭いてやる。
「水、持ってくるから」
「……ごめん」
急いでグラスに水を汲んで、深雪の元に戻った。呼吸が苦しそうな感じでは無い。どこか痛むのだろうか。