妖しく溺れ、愛を乞え
◇
次の日、深雪はあたしよりも早く起きていて、野菜炒めや味噌汁を温め直したり、乾いた洗濯物を取り込んだりしていた。朝から忙しそうだなぁ……。
「まだ寝ていて良いのに」
「そんなに寝ていたら腐っちまうよ」
用意してくれた朝食を食べる。昨夜の野菜炒めは、まわりカリカリで黄身は半熟に焼いた目玉焼きに添えてあった。
「体調はどう?」
「まぁまぁ」
「変動あるんだね」
「そうだな。でもまぁ、大丈夫だよ」
「何度か倒れている人がなに言ってるの。いいから大人しくしていなさい」
ご飯は多めに炊いてあるし、おかずも冷凍ものとかあるし。調子が良いなら向かいのカフェで食事しても良いし。人目があるから万が一なにかあった時は大丈夫だろうと思う。
とにかく、今日1日は様子を見て貰わないと。こんなに続けて休まれちゃ、会社にも迷惑かかるし。
「じゃあ、行って来るね。なにかあったら連絡して。状況によっては早退してくるから」
「大丈夫だってばー。雅は心配性だなぁ」
「当たり前でしょうが!」
ひとりで外出して、その辺で野垂れ死にされても困る。
「どこか出かける時はメールでも入れてよ。心配するから」
「分かった分かった」
本当に分かっているのかしら。生返事だなぁ。
バッグを取ると、玄関へ向かった。