妖しく溺れ、愛を乞え
「行くところが無いなら、俺のマンションに来い」

「なに……」

 なにを言い出すの、このひと。マンション? どこに住んでるわけ? 本店から来たんでしょう。

「いいから。今夜は無理だから、まぁ明日の夜にでも」

「せ、専務は帰られるんですよね……? 出張は……」

 今日1日のはずでしょう?

「仙台、長期出張にするから」

 めまいがする……頭おかしいのかな、この専務。

「なに言ってらっしゃるんですか……」

「そういうことぐらい、簡単なんだよ。俺は」

「まさか」

「いいから。言うことを聞きなさい」

 そう言うと尾島専務は、ザクザクと音を立てながら前の集団に追いついて行った。

 どうしよう。頭、おかしいんだあのひと。変なヤツに目を付けられたんじゃないだろうか。


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