妖しく溺れ、愛を乞え
「これで、信じてくれる? 種も仕掛けも無いし、この吹雪は俺が呼んだ。雅のことを凍えさせることだってできるんだよ」

「なんで、こ、こんなこと」

「信じてくれないからだろう」

 危険人物なのかもしれない。信じてくれないからって、こんなこと……。

「信じる、信じるから」

 震えながらやっとそう言うと、吹雪が止んだ。

「あ……」

 あたしはほっとした。背後に立った深雪がふっと息を吐く。そして、あたしのことを後ろからそっと抱き締めた。こんなことを思っている場合じゃないけれど……温かい。

「ごめん。驚かせてしまった」

「あ、ああああの」

 近い! やめろこのクズ……!

「深雪、さん」

「呼び捨てで良い」

 面倒くさい男。いつまでくっ付いているんだろうか。でも、危険人物かもしれないのに、背中の体温は感じる。おかしい。あたしもおかしいよ。自身の危機管理能力が低下したのか。

「深雪」

「はい」

「危険なひと、ですね」

「そうかも」

 簡単に信じられない。どうした。なにが起こっている。雪を吐き出す自称妖怪が現れて、あたしを好きだと言う。

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