妖しく溺れ、愛を乞え
◇
急に乱暴に、あたしの生活へと入ってきた深雪。得体の知れない存在。
あたしを拾い、近くに紛れ込み、招き入れて甘い言葉で絡め取る。
流されそうな自分が怖い。
普通に幸せになりたいだけなのに……
「人間の男が良かった」
口からそう出てしまう。そう、それに尽きる。
人間で、健康で普通の男が良かった。潤は最終的にクズだったけれど、普通の人間だったし、体だってわりと丈夫だった。
深雪は、見た目は男だしかなり美形だけれど、人間ではない。どうしてそうなった……神様って不公平ね。
ため息ひとつつくたびに、出会いをひとつ減らしている気がして悲しい。