妖しく溺れ、愛を乞え
「その様子じゃ知らないみたいだな。あんな、力だけ強い呪い持ちに、なにができる。雪の妖怪と吸血どっち付かずで、中途半端。あんな存在に。お前のことも体目当てで手を出したんだろう」

「ちょっと、言い過ぎじゃない? 失礼だよ」

 あたしと深雪を侮辱しないで。

「事実だろう。あいつは、目の前に現れたから。お前を見つけたから。……気紛れだ」

「な……やめてよ」

「どうせ捨てられる」

「やめてよ!」

 自分でもそう言ったはずだった。分かっている。なのに……。

「おやおや」

 あたしの反応に呆れたように手をあげて、その仕草に腹が立つ。

「呪い持ちと居て、お前……死ぬぞ」

 ニイッっと笑い、あたしを見た。なに、ノロイモチって。恐ろしくて、これは敵だとあたしの中の警報が鳴る。逃げなくちゃいけない。怖い。

「……まぁいい、来い」

「え、ちょっと」

 突然、腕を掴まれたかと思うと、すごい力で引き寄せられる。逆らうことが出来ない。体に力が入らない……! なにか力を使っているに違いなかった。

「やだ! やめて離して、やだやだー!!」

「黙れ、うるさいな」

「やぁー! あ、が」

 ……! 声が出ない。嘘でしょこれじゃ助けを呼べない。

 あたしの体は米俵のように担がれて、自由が利かない。逆さまに男の背中。嫌だ、さらわれて殺される!

「うるさくて敵わん」

「う、あう……」

 嫌だ、怖い。 助けて、助けて! 深雪……!!

「んううーー!!」

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