妖しく溺れ、愛を乞え
◇
「おはようございます」
「おはよう春岡さん」
机を拭いていた初乃さんと挨拶を交わす。眠い。強烈に眠い。完璧に寝不足だ。
あの日から、初めて体を重ねた日から、毎晩のように深雪は体を求めてくる。あたしはそれを断ることができない。
1度だけじゃなく、2度も3度も……。
「……」
夜のことを思い出すと、羞恥心と苦悩で震える。押し潰されそうになる。顔が焼けそう。深雪の目が、あの深い色があたしをずっと見ていて……こっち見んな。
あんまり続くものだから、今朝は寝坊をしてしまい、朝食も食べられなかった。スッキリ起きていたのは深雪だけ。しかも絶好調らしい。
「いやぁ、やっぱり黄金血は凄いな。元気元気」
「……それはなによりです……」
そんな会話を、朝の支度をしながらしたのだった。滋養強壮栄養ドリンクか、あたしは。
お昼、デスクでコンビニのおにぎりをかじっていると、スマホが振動した。メールだ。
「最近、顔出さないんじゃない? 元気かな」
ミミさんからのメールだった。
そうか。あの泥酔して……深雪に拾われた日から、1度も行っていないんだ。
サンドイッチ食べたいな。ひとりでゆっくりビールを飲むのも良いかも。
深雪と一緒に居るようになってから、なんだか冷静に考え事をしていない気がする。
平日だけれど、深酒しなければ、ちょっと寄っても良いかなぁ。
マグに作ったスープを飲み干し、本日のランチ終了。ああ、今日の楽しみ終わったなぁ。……っておっさんか、あたしは。
洗いに行こうと、給湯スペースへ向かう。その時、通路でバッタリ深雪に会った。