メシトモ!
 そうなのか、私だけなのか。

 自分だけという言葉がなんだか嬉しかった。

「人物観察は職業病だから。仕事をしながら、お客様の様子を窺う。これは常にやっているからね」

「杉山さん、もし転職するなら探偵がいいかもね。その観察力は役立つと思うよ」

「転職の予定はないから」

 満腹感も落ち着き、そろそろ帰ろうかということになった。

 佐々木さんはお財布から、たくさんのクーポン券を出した。

「随分、たくさんのクーポン券を持ってるね」

「これ全部、杉山さんと一緒にご飯を食べに行ったときにもらったやつだよ」

 テーブルの上にあるクーポン券を適当に取った。それに書かれている店名はどれも記憶にあるものばかりだ。

 そっか。いつも割り勘にしているけど、会計は佐々木さんがしている。そうすればレシートやクーポン券をもらうのは佐々木さんになる。

「これだと、佐々木さんのお財布がパンパンになっちゃうね。でも、また行くかもしれないのに捨てるのももったいなしね」
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