メシトモ!
「コインケースの方」

「そうだね、そうだよね。ごめん、今はこのコインケースの話をしていたんだよね」

「ううん、気にしてないから」

 佐々木さんにお会計を任せて、私はトイレに行った。

 鏡を見て、口に青のりやソースがついていなか確認をして、グロスを塗りなおした。

 トイレから出ると、お会計はもう終わったようで佐々木さんは居なかった。お店を出ると、佐々木さんがガードレールに寄りかかっていた。

「これ、どっちが持っておく?」

「佐々木さんのほうがいいかも。自慢じゃないけど、私、ズボラなんだよね。持ってくるの忘れそうで」

「なら、僕が持っておくね」

 佐々木さんは、コインケースを仕舞いながら歩き始めた。

 駅へ続く道はぽつぽつと歩く人影がある。後ろの方からは微かに男女の笑い声が聞こえてくる。

「杉山さん、今度、僕のアトリエへ来ない?」

「アトリエですか?」

「うん。杉山さんにモデルをやってもらいたいなって」
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