メシトモ!
「これはベルギービールです。フランボワーズで作ったフルーツビールですね」
「フルーツビールか。だから少し赤みがかっているんですね」
「そうなんですよ」
「僕も同じもの頼んでいいかな?」
「どうぞ。でもこれ甘めですよ」
「大丈夫、甘いお酒も好きだから」

 佐々木さんはカウンター越しに、フルーツビールと枝豆を頼んだ。私もついでに焼きおにぎりと生ビールを頼む。

 カウンター内で料理をしている店主の手を眺めた。手つきいいよな。プロだから当たり前だけどさ。おっ、ひっくり返した。フライパンに反動を付けるだけで、なんでひっくり返せるんだろう。私がやると、中身が飛び散って大惨事になるんだよね。涼太がいるときにやろうとすると、全力で止められるし。やっぱり不器用に料理は向かないよな。

「ぷっ」

 隣を見ると、佐々木さんが小刻みに震えながら笑っていた。なんだろう。なにがそんなに面白いんだろう。

「あの、どうかしました?」

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