メシトモ!
「モデル!」

「違うんだ。写真を撮るとか人前に出てもらうとかじゃなくて。ヴェールのバランスを見たいんだ。身長一六〇センチより少し高いくらいだよね」

「一六二です」

「友人に頼まれてヴェールを作っているんだ。

その友人と杉山さんの身長がだいたい同じくらいで。だから試着をしてもらいたいんだ」

 コンビニや居酒屋などの、駅前に近づけば近づくほど明りが増え、喧騒も増えていく。もう少しで駅に着きそうだ。

「そういうことなら。ヴェールだけでいいんだよね」

「うん。服を着替えることもないから、頭だけ貸して」

「頭だけって、聞きようによってはホラーだね」

 佐々木さんは「本当だ。ウェディングドレスとホラーの組み合わせって、案外怖いよね」と言って笑った。

「ねえ、ヴェールだけは、毎回人に試着してもらうの?」

「いいや。今回はアンティークのヴェールをリメイクすることになってね。アンティークだと、当時の人の背格好で作られているから、細かく確認したいんだ」
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