メシトモ!
 生クリームやフルーツの甘い匂いは、どの食べものよりも弱い匂いだ。それなのに、どうしてこんなに強く甘い匂いを感じるのだろう。

 ケーキがすべて並べ終わる。それを眺めると幸せな気分になる。SNSをなにもやっていない私ですら、写真を撮りたくなってしまう。

 フォークやナイフの整理をしていると、近藤さんが取り皿やトレーを横で並べ始めた。

「杉山、調子よくなったみたいだな」

「はい、夏バテもやっと終息を迎えてくれたみたいです」

「それだけじゃないだろ」

「それだけですよ」

 近藤さんは「そうかな」とまだ言っている。

「そうですよ」

 最後に、おしぼりやペーパーナプキンを所定の場所に適量入れ、その場から離れた。

 十三時からお客様が受付を通って入ってくる。

 ケーキビュッフェとなれば、女性のお客様が圧倒的に多い。

 どのお客様も幸せそうにケーキを食べている。この顔を見るとこっちも笑顔になる。そしてケーキは偉大だ、と思ってしまう。見ているだけで笑顔になる。つまりは、食べ物なのに食べていない段階で、すでに人を幸せにしているのだから。
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