メシトモ！
　佐々木さんの手酌で熱燗を注いで、一口飲んだ。

　私は追加したウーロン茶を飲んで、詰めていた息を吐きだした。

「そして僕が拒絶すると泣き叫ぶんだ。私と仕事どっちが大事なの？　私でしょ？　その問いかけに答えられないでいると、彼女はますます泣き叫ぶんだ。どうしてなの、私はあなたが一番大切なのにって。そのあとは悲惨だった。僕の大事なものを全て壊していった。もう、どうすればいいかわからなかった」

　佐々木さんは自嘲的な乾いた笑いを小さくして、話し続けた。

「僕がなにをしたんだろうって、何度も考えたよ。僕は僕なり彼女を大切に思ってきた。それなのにどうして。そんなに僕が嫌いだったのか。そらなら面と向かって言ってほしかった。ちゃんと言ってほしかった。ただ壊して去っていくなんて。そんな別れ方はしたくなかった。」

　佐々木さんの目から一筋の涙が流れ落ちた。佐々木さんはそれを気にすることもしなかった。

　私は、ただ佐々木さんの言葉に耳を傾けた。

「彼女とは学生時代の付き合いなんだ。学生のころは友だちだったんだけどね、社会人になって二年くらいたったころから、なんとなく付き合い始めた。お互い気心知れているし、変に格好付けなくてもいいし、友だちの延長線みたいな感じだった。結構、仲のいいカップルだった思う。そう、そんな風に思っていたのは僕だけだったみたいだけどね」
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