メシトモ!
 深いため息を吐いてから、佐々木さんはビールを追加して、肉じゃがを少し摘まんだ。

「彼女が去った日から、決めたことがあるんだ。恋はしないって。仕事だけでいい。一番はいらない。二番だけあればいい。そう思うようになっていた。そんなふうになっても、僕は彼女を探していた。ごめんなさいって言ってくれるんじゃないか。そうすれば、僕は全てもとに戻るじゃないか。そんな馬鹿げた考えを持っている自分も嫌だな、と思ってた」

 この三年はずっと孤独だったのかな。

 たぶんこの彼女はあの写真の人だろう。優しそうな人だったな、とその人の顔を思い出した。そんな人がどうして佐々木さんのことも、自分のことも追い込むようなことをしたんだろう。

 そんな疑問を投げかけることはできなかった。こんなことはとっくに気が付いているだろう。わからないことが多くて、傷付いている人。

 そんな人のこと忘れちゃえとは言えない。佐々木さんはそんな言葉を望んではいない。ただ話してしまいたいんだ。だから最初に「忘れてくれ」と言ったんだろう。

「でもね、最近は結構楽になっていたんだ。杉山さんのおかげで。僕の友だちはさ、大体の人が彼女のことを知っているんだ。好きな人が中々できないことも、仕事にのめり込んでいることも」
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