メシトモ!
 私がなにも言わなければ、あのまま続けていたのだろうか。一瞬、このまま身を委ねてもいい、と思った。私だって二五年生きてきたのだから、こういう寂しさの紛らわし方も時には必要なこともわかっている。

 でも、もしそうなれば、まじめな佐々木さんはすごく後悔するだろう。寂しさを紛らわす手段にこんなことをしてしまった、と思うはずだ。そんな思いをさせたくないと思って、あそこで止めた。

 キスぐらいなら気にすることないと宥めることもできる。それにもしかしたら佐々木さんが、なにも覚えていない可能性だってある。

 それなら、このことは私も忘れればいいこと。だから、あそこで止めて正解だったんだ。

 それにしても、佐々木さんの元彼女さんの話は結構堪えた。

 あの写真はいつも持ち歩いているのかな。それとも、たまたまあの本に挟まっていただけなのかな。

 本当に反則だよ。一番辛いときに会いたいと思ったのが私ってさ、嬉しいに決まってるじゃない。

 女の写真を見て凹んで、元彼女の話を聞いて凹む。ああ、この感情を自覚したくないなあ。自覚しないでやり過ごしたい。

 どうにもなりそうにない気持ちを膨らませたって大変だ。とりあえず、これは保留にしておこう。
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