メシトモ!
 ため息を吐いて、ベッドから降りた。よく眠る佐々木さんを見て、腕時計が邪魔そうに見えたから外した。それから布団を無理矢理に引っ張って、体に掛けてあげた。酔っ払っている佐々木さんは少し雑に扱っても、起きることはなかった。

 寝室を出て、玄関先に落ちている鞄を拾い上げた。リビングにあるソファに鞄を置き、自分も座った。

 ああ、疲れたな。少し休んでから帰ろう。また、タクシー呼ばないと。あと書置きしておいたほうがいいし……。

「杉山さん、杉山さん」

 誰だ、私の苗字を呼ぶのは。

「杉山さん、杉山さん……。杉山さん」

 目を細く開けると、すごく眩しかった。

「起きた?」

「え、あれ、どこ?」

「あの、僕の家です」

「ああああ! ごめん! 佐々木さんを送り届けて、すぐに帰ろうと思ったんだけど、ソファに座ったら寝ちゃった」

 状況が呑み込めてくると、頭もだんだん覚醒した。鞄からスマホを取り出して、時間を確認すると朝の五時半だった。
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