メシトモ!
 六畳くらいの部屋には、棚と大きなテーブルにミシンが載っていた。棚にはデザインの資料使うのであろう本が立ててあり、下の方の段には段ボールに入った布があった。その横にはパイプハンガーに掛かったドレスが数着あった。二体のマネキンがあり、それぞれデザインの違うウェディングドレスを着ていた。

「デザイナーさんのアトリエってすごいね」

「見たいものとかがあったたら見ていいよ。僕はちょっと準備があるから」

 佐々木さんはテーブルの上にメジャーやファイルなど、これから必要なものをどんどん置いていく。

 私はパイプハンガーに掛かっているドレスを、慎重に扱いながら見ていた。

 あれ、このヴェールどこかで見た。あ、あのときの拾ったやつだ。

 ハンガーに掛かっていたヴェールを取り出して、ゆっくり広げてみた。

 丈は私のふくらはぎ辺りまであり、四枚の層を織りなしているものだった。あのときは両手でぎゅっと掴んでいたから、ヴェールの裾についているレースがすごくきれいという印象だけだった。これはレースだけではなく、オーガンジーが特殊なものらしい。重なった四枚のうち、上から二枚目のだけが光の加減で薄いピンク色見える。そして細い糸で小さな花が刺しゅうされていた。
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