メシトモ!
 細部にまで拘っているんだな。ヴェールでこれだけのものをデザインするなら、ドレスのデザインは果てしのないことになりそうだ。

「杉山さん、準備できたよ」

「うん」

「あ、そのヴェール」

「うん。あのとき、すごくきれいだと思ったから」

「僕はこれを見ると杉山さんの後姿を思いだすんだ。両腕でヴェールを掲げていて、なんだか僕のヴェールがすごく価値のあるもの思えたんだ」

「心配しなくても価値はあるよ。ウェディングプランナーの友だちが佐々木さんのデザインしたドレスはすごく人気があるって」

 佐々木さんは私の手からヴェールを取り、元の場所に戻した。

「そう言ってもらえて嬉しいよ。じゃあ、ヴェールを着けてほしいんだけど、その前にアクセサリーやヘアピンを外してくれる。ヴェールに引っかかるといけないから」

 私は腕時計、ピアス、飾りで付けていたバレッタを外した。

「じゃあ、被せるね。留めるとき髪の毛を引っ張ったらごめん」

 私の後ろに立ち、ヴェールを被せた。そして前に回り、数か所をヘアピンで留めた。
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