メシトモ!
「これがアンティークのヴェール?」

「いや、これは僕がリメイクして作ったもの。本物は向かって右側のボディがしているやつ」

 そのヴェールは白というよりアイボリー色になっていた。本当に古いヴェールなんだろう。

 佐々木さんはメジャーでサイズを測ったり、まち針で所々留めたりしている。

「このヴェールのことについて聞いてもいい?」

「どうぞ」

「友だちの頼みでこのヴェールを作ることになったんでしょ?」

「うん」

「あのアンティークのヴェールはその友だちのものでしょ。どこで手に入れるの? それとも代々家に伝わる家宝?」

「違うよ。友人のお嫁さんが独身最後の旅行をしたんだって。行先はヨーロッパ。そこでたまたま、そのヴェールを見つけたらしいよ」

「へえ。でもアンティークって高いんじゃないの?」

「いや、ピンキリだよ。由緒正しき名家のヴェールなら高いだろうけどね。これはアンティークってものにはなるけど、今の僕らの感覚で言ったら古着と一緒。普通の家庭で見つかったヴェールを誰かが売ったんだろうね」
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