メシトモ!
「なるほど。それであのアンティークのヴェールを原案にして、佐々木さんは現代用にアレンジをして作り直す依頼を受けたってこと?」

「そう。そして杉山さんはそのモデルになったってこと」

 ヴェールはどんどんまち針が増えていっている。くしゃみをしたらどこかに刺さりそうだなと思った。

「ちょっと前もいい」

 佐々木さんが私の前に来ると、目の前にヴェールを下された。

 視界が一瞬で乳白色の世界に変わった。白い世界越しに、佐々木さんと目が合う。私が目を逸らすよりも先に佐々木さんが目を逸らした。

 見られていてもやりにくいだろうから、視線を佐々木さんの胸辺りに落とす。そうすると、顎から首くらいしか視界に入らない。

 前の微調整はそれほどないみたいで、すぐに下ろされていたヴェールが上がった。

「杉山さん、もう少しだから」

「うん、焦らなくていいよ。そんなに疲れてないし」

「うん、でも本当にもすぐで終わるから」
< 174 / 235 >

この作品をシェア

pagetop