メシトモ!
「なに、杉山さん」
「ここに入って来たときは、私に敬語使っていたのに、今は普通ですね」
「本当だ。笑ってばかりいたから、敬語を使うの忘れてた。敬語に戻しましょうか?」
「別にいいです。敬語じゃない口調の方が佐々木さんに合っていますよ。柔らかい感じがして」

「そうかな。なら、杉山さんも敬語やめたら?」
「無理です。敬語スイッチを一度入れちゃうと、簡単に切れないです」
「そうだね。スイッチって簡単に切れないよね。簡単に切れたらどんなに楽だろう」

 佐々木さんが言った言葉に私は無言になった。人は生きていればいろいろとあって、無理矢理にでも終わらせなければならないこともある。佐々木さんはどんなスイッチを切りたいんだろう。

「ごめん、変なこと言っちゃったかな。深い意味はないから気にしないで」
「はい」

 なんとなくモヤっとした感覚が残った。いろいろあるよねと心で唱えて、この感情に線を引いた。

「僕、最後にあんみつでも頼もうと思うんだけど、杉山さんもなにか頼む?」

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