メシトモ!
メイン・ダイニング・ルームではクリスマス限定のディナーがある。私はその給仕をするため、片仮名の連なる料理名を暗記していた。

 スタッフルームではお経を唱えるように料理名をもごもごと言っている。こんな姿は絶対にお客様に見せられないと思う。

「近藤さんは、お経を唱えなくていいんですか」

 近藤さんは一人涼しい顔で暖かいお茶を飲んでいた。

「俺はもう覚えた」

「毎年、早いですよね、覚えるの」

「暗記は得意だから」

「うらやましい」

 私もメモってある紙を出して、一人ぶつぶつと言った。

 近藤さんは私の邪魔をするように、九九を一の段から順番に言い始めた。

「近藤さん、それやめてくださいよ」

 私がそう言うと、近藤さんはくっくっと笑って、スタッフルームから出て行った。

 近藤さんとはまだ食事に行っていない。あの時の誘いは一体なんだったのか、未だに不明だ。

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