メシトモ!
「ねえ。ここはなんなの?」

「あれ、特に調べないで来た?」

「うん。そんな時間なかったし」

 納得した顔で加絵はバッグから紙を出した。それはネットからプリントアウトしたものらしい。用紙の見出しは“Maria Afternoonドレス展示会”と書かれている。

「“Maria Afternoon”って、あのドレスメーカーの?」

「そう。今年に入ってからずっと“Coming Soon”だったホームページが、先月、この展示会のインフォメーション変わったの。私も最近、気が付いてね。どうしても見に行きたくて。宏実、最近落ち込んでるみたいだったから、気分転換になればなと思って」

「そっか。ありがとう」

 小さな列はあっという間に解消され、展示場へと入ることができた。

 中はドレスに合わせて、ロココ調というか、ヴィクトリア王朝というか、西洋の洋館を彷彿するようなデザインになっていた。

「映画のセットみたい」

 加絵は楽しそうにあたりを見回していた。午前中だというのに人は意外と多く、女性のお客さんがほとんどだった。
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