メシトモ!
「端から見ていこうか」

 加絵が入口近くにあるドレスを指さして言った。

「そうだね」

 ドレスの横には映画で使われたものは、そのワンシーンの写真が飾られていた。そして全てのドレスにデザイン画が展示されている。

 夜空を思い浮かべるような濃紺のドレス。ひまわりのような明るさを持つ黄色いドレス。深紅という言葉がなにより似合う真っ赤なドレス。どのドレスも淡い色合いはなく、濃い色のドレスだった。女性らしい可憐な部分と女性特有の芯の強さを表現しているように思えた。

「どのドレスもきれいだね」

「うん。でもさ、ウェディングドレスだけは手掛けてないんだよね。これだけのドレスを作れるならウェディングドレスを作ってもいい気がするんだけど」

 色とりどりのドレスに魅せられていて、気が付かなった。ウェディングドレスがないことに。前にネットで調べたときにもウェディングドレスはなかった。なにかポリシーでもあるのかな、と思う。

 ちょうど目の前にあったデザイン画を見ると、どこかで見たことがあるように思えた。

 ファッションに疎い私がなぜデザイン画に見覚えがあるんだろう。自分の記憶をたどっても、そんな本や雑誌を見た覚えがなかった。
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