メシトモ!
 両手で掴んでいるせいで、どんなデザインかがよくわからないけれど、手触りが抜群なのはよくわかる。そして裾にはとても繊細なレースが付いていた。ヴィクトリア王朝を連想するようなレースの横を、雪が通り過ぎる。その情景は幻想的だった。

 これ、どうすればいいんだろう。ヴェールを掲げたまま突っ立っていると、突然ヴェールが後ろへと引っ張られた。あっという間にヴェールは私の手の中からなくなる。振り向くと、背の高い男性が立っていた。

「拾ってくださりありがとうございます」
「いえ」

 男性の腕には、ドレスカバーの掛った服が五、六着ほど重なっている。その上にヴェールを乗せた。ドレスカバーから見える服は、ほとんどが白いものばかり。たぶんブライダルの関係者なんだろう。

「急いで非常階段を駆け下りていたら、手元が滑って落としてしまって」
「そうですか」

 ヴェールから視線を上げると目が合った。

 きれいな目。少し明るめのブラウンの瞳だった。 身長も高い。たぶん一八〇センチ前後。

 雪はさっきよりも強くなり、男性の黒髪には白い点が増えていく。

「あの髪の毛に雪が積もっていますよ」

 男性の髪を見ていた矢先に自分の髪を指摘されて、ドキッとしながら自分の頭を軽くはたいた。

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