メシトモ!
 そんな加絵の様子を全く気がつかない雰囲気を醸しながら、うどんの汁を飛ばさないように気をつけながらうどんをすすっていた。

「ねえ、近藤さんとどうなったの?」

「えっ? なにが?」

「ふーん、なんかあったんだ」

「なにも言ってないのに、なにそれ」

「人が嘘を吐くときや、隠し事をしているときに出てくる言葉は“なにが”なんだよ」

 加絵の鋭い観察力はこういうとき本当に困る。

「近藤さんのこと気づいてたの?」

「うん、なんとなくだけど。たぶん宏実のこと、好きなんだろうなって」

「そっか。私って、本当に疎い上に、下手なんだ」

「下手って?」

「恋愛に関して全般」

 食欲はないけれど根性でうどんを口に運ぶ。美味しいはずの食事も無理に食べれば美味しくはない。

「別にいいんじゃない。恋愛下手でも。スマートな恋愛なんて映画の中だけ。それにスマートに恋愛するより、じたばたしながら這いずり回って悩む恋愛している人のほうが人間臭くていいよ」
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