メシトモ!
「うん。加絵、ありがとう」

「ほら、昼休み終わっちゃう。早く食べよう」

 お昼休みは残り二十分。社食はピークの時間を過ぎ、空いているテーブルも多くなっていた。

 恋に悩もうが、元気がなかろうが、仕事も時間も待ってはくれない。少し温くなってしまったうどんをすすり、午後の業務のための力を蓄えた。

 社食からスタッフルームへ戻る道すがら、スマホを弄りながら歩いていた。注意散漫だった私は、角から曲がってくる人に気が付かなかった。

「うわぁ」

「ぎゃあっ」

 誰かと勢いよく正面衝突してしまった。

「すみません。大丈夫ですか?」

 膝を擦りながら「痛ってー」とつぶやいたのは近藤さんだった。

「杉山、前はちゃんと見ろよ」

「すみません。怪我はないですか?」

「ああ、大丈夫だよ」

「それより、杉山。俺にぶつかったとき、なんか手に持ってなかったか?」

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