メシトモ!
「早く中に入ったほうがいいですよ。僕もこれで失礼します。ヴェール、ありがとうございました」

 男性はヴェールを押さえながら小走りに去って行った。

 時計を見るとあと十分で休憩が終わろうとしている。ベンチに置いたお汁粉を一気に飲み干して更衣室へ戻った。

 ロッカーからへアーゴムを出し、髪を束ねる。サイドをピンで留め、鏡で入念にチェックをする。そして羽織っていたカーディガンを脱いだ。

「あっ、杉山さん。今日のシフトは午後から?」
「そう。鈴木さんは上がり?」
「うん。今日、寒くない?」
「外、雪が降っているよ」
「うそ。どおりで寒いわけだわ」

 鈴木さんは私の一つ上、中途で入ってきた人。さっぱりした性格で人当たりもいい。シフトが一緒になることも多く、よく話もする。

「じゃあ、お先に。お疲れさまです」
「お疲れさまです」

 バックを持った鈴木さんは首をコキコキ鳴らしながら更衣室を出て行った。その背中に向かってもう一度『お疲れさまです』と念を送っておいた。

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