メシトモ!
 さて、私も頑張りますか。軽く伸びをして、深呼吸をする。これが私の仕事スイッチの入れ方だ。

「いらっしゃいませ」

 通り過ぎるお客様に挨拶を交わしながら、バンケットルームに向かう。

 バンケットルームに入ると、キャプテンである町田さんがバイトの子たちに細かい説明をしていた。今は期間限定のディナービュッフェがある。普段はレストランの担当だが、人手が足りない時はビュッフェを手伝うこともる。

 町田さんバイトへの説明が終わり、ほかのスタッフが集まった。今日の注意点や変更点の説明を聞き、それぞれの仕事に取り掛かる。アルバイトの子たちはメモ帳をもう一度見直していた。

 その姿を見ていると、新人研修の頃を思い出す。覚えなくてはならないことが多くて、メモ帳はすぐに埋まってしまい、やっていけるのだろうかと不安になった。あれから三年が過ぎて、少しは余裕を持って接客ができるようになった。

 テーブルやイスのセッティングが完了し、次にカトラリーやナプキンをテーブルの上に置く。

 そして料理のセットをするのが一番大変だ。大皿に盛られている料理は重い。温かいものは熱い。そんなものを何種類も運ばなければならない。何食わぬ顔で運んでいても『転ぶな、手元注意、平行に』を呪文のように心の中で唱えている。

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