メシトモ!
「そう、それならいいけど。ホラー映画好きなんだ」

「はい。精神的にじわりじわり来るものからゾンビものまで、なんでも来いです」

「へえ、今度お勧めの映画があったら教えて。僕も結構ホラーもの観るから」

「そうなんですか? 来週、会うときにお勧めのDVD、持っていきます」

「楽しみにしてるよ。どんなところで食べたいか考えておいてね」

「はい」

「それじゃあ」と言って、佐々木さんは電話を切った。

 いや、焦った。電話の向こうで色々な叫び声が聞こえて、びっくりしただろうな、佐々木さん。

 来週はどこに食べに行こうかな。近くの雑誌を引っ掴んで、ページをぱらぱらと捲った。

 あ、映画。あのヒロインが死ぬかもしれないんだった。

 雑誌を閉じ、途中から再生をした。

 ヒロインが死にそうな感じで化け物に追われていたのに、ヒロインの機転で化け物は崖に落ちてしまった。なに、このしょぼい展開。結局、うまいこと治まり平和になりましたとさ、おしまい。前半から半ばに掛けて盛り上がりを見せておいて、この結末はない。DVDをレンタルして観なくてよかった。地上波で充分だよ、これは。

 テレビを消して、雑誌を見ながら、ネットで行きたいお店のリサーチを始めた。つまらない映画を観たあとは、別のことで楽しむのが一番。

 気になるお店やそのお店のクーポンをスマホに保存をする。佐々木さんの好みもあるだろうから、今日調べた所に必ず行けるとは限らないけれど、加絵と行くのもありだし、新しいお店の開拓にはいい時間だった。

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