メシトモ!
 重い腰を上げて、だらだらと掃除や洗濯を始めた。普通の掃除しかしていないのに、どうしてこうも時間がかかるんだろう。弟の涼太がやると、私の三分の一の時間で終わるのに。時計を見ればもう五時半だった。これだけ掃除をしたあとに料理をする気力はもうない。今日は外で夕飯にしよう。

 軽く着替えて部屋を出た。六時を過ぎれば空は暗く、空気も冷たい。あと一週間で三月になるけれど、まだ春は遠いみたいだ。

 白い息を吐きなら、頭の中には食べたいものがぽんぽんと浮かぶ。よし、好きなだけ飲んで食べるぞ。いや、明日は仕事だからお酒は控えめに、だ。体が冷え切ったころ、目の前に現れた大きな看板、居酒屋びーだま。

 着いた、着いたぞ。ドアを開ければ、むわっとビールの匂いが漂う。ああ、早くビール飲みたい。お店の中に入りカウンターに座る。そしてメニューも見ずに生ビールとポテトサラダを頼んだ。近くにあったメニューを取り、次にどのビールを頼むかを考える。

 明日は仕事だし、アルコール度数が低めの甘いビールにするかな。ならベルギービールのフラボワーズかチェリーだな。つまみは唐揚げとオクラ納豆でしょ。

「お待たせしました。生ビールとポテトサラダです」

 メニューを元の場所に戻し、目の前に置かれた生ビールを手に持つ。『今日も一日お疲れ様でした。明日も頑張りましょう』と心で労い、小声で「いただきます」と言ってから生ビールを飲み干す。

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