未知の世界3
気がつくと、そこは見たことのない天井。
ボーッとしていると、
「気付いたのね。」
といい、医務室の保健師さんかわからないけど、白衣を着た女性が近づいてきた。
私の腕に刺さったのは点滴。
ここは病院の附属大学だから、医者がいれば医療行為もできるんだ。
なんて関心しながら、天井を見つめていた。
「気分はどう?
こちらで調べて、保護者に大学から連絡したんだけど、つながらなくて。
もう夜の8時になるから、さっきまでいた彼氏くんは帰したわ。」
彼氏じゃないけど。
たける、今までそばにいてくれたんだ。
ありがとう。
それより、幸治さんに連絡されちゃったんだ。
心配される前に帰ろう。
「気分は良くなりました。タクシーで帰ります。」
と言うと、
「気分が良さそうな顔ではないけど、まぁ、タクシーでなら、一人で帰っても大丈夫かな。」
と言われ、私は医務室をあとにした。
大学からマンションまで、そんなに遠くない。
いつか幸治さんと歩いたこの道。
今は幸治さんが、ものすごく遠いところにいる気がしてきた。
私は、医務室で寝ていた時よりもだるくなった体で、とぼとぼ歩いた。
いつもより長く感じる帰り道。
体もだるくて重いし、なによりも幸治さんが帰ってるかもしれなくて、家に帰るのが辛い。
もう少しだけ、外にいてもいいよね。
帰り道にある公園のブランコに座った。
ブランコをこぐ力さえない。
重力に従って、うなだれる。
気付くとうとうと寝ていた。
もう限界なのかな。
でも発作は出ていない。
公園は誰もいない。
ブランコがきしむ音しか聞こえない。
また一人ぼっちになった気がした。
幸治さんとの生活、アメリカから帰ってきたお父さんとお母さんとの旅行。
すごく楽しかった。
今までには経験したことのない毎日だった。
あれは夢だったのかもしれない。
やっぱり私は、
一人ぼっちなんだ。
と思うと、涙がボロボロと出てきた。
顔中が熱い。
頬に伝う涙も熱くなってる。
吐く息も、熱い。
込み上げてくる感情は、まるで私の顔を締め付けるかのようだ。
苦しっ!
「プハッ、はぁはぁはぁ。」
気付いたら、無意識のうちに呼吸をしていなかった。
フーっと息を整える。