未知の世界3

トントン





ん?










音がして目を覚ました。





扉が開き、誰か入ってくる。





と思うと、そこには幸治さんがいた。





「、、、、、え?






ど、、、、、し、、、て」





困った顔をする私を見ている幸治さんは、とても、悲しそう。






「少し話せるか?」






と聞かれ、私はうなづく。





「一つ一つ聞いてもいいか?」






と言われ、私は再びうなづく。





「どうして、病院を抜け出したんだ?」







初めて、聞いてくれた。





いつも怒鳴ってばかりだったのに。






最初に理由を聞いてくれるなんてことはなかった。






「幸治さんの、、、





お荷物になってる。」






そういうと、幸治さんは驚いた顔をする。





「なんで?そう思うの?」






「だって、





仕事で忙しいのに、こんな私を預かって、わがままで身勝手な私を。





私が体を壊す度に、振り回されて。」





というと、幸治さんは、






「ハハッ。






自分のことがわがままで身勝手って。





まぁ、確かに、自分の体のことになると二の次にして、治療はちゃんと受けないは、逃げ出すわ。






でも、俺はお前がいて、生活のほとんどのところで楽させてもらってる。

    


ありがとう。」




えっ?






お礼言われた?





今度は私が驚く。





「次に、どうしてこの間、雨の中走ってたんだ?」






「あれはっ、




雨が突然降ってきて、早く帰らないと強くなると思って。





傘を持ってなくて。





走らないとびしょびしょに濡れると思って、走っちゃいました。」






先生はそのことについて返事をせず、






「それから、部屋に戻って、俺がお前を叱ったよな。






あの時、なんで逃げた?」






ここで話そうか。






話しても幸治さんにはわからない。





それに、馬鹿にされると思うと、恥ずかしい。







「話せないか?」






「、、、自分が、、、みっともない。






幸治さんにそう思われそうで。」






「誰かの前で、いい格好をしなくてもいいんだ。





自分を偽って、無理して、いい格好なんて、するな。





少なくとも俺の前では、自分をさらけ出せ。





一緒に暮らしてるんだから、そうしてないとお前が壊れる。」 






私はいつも幸治さんの言葉で救われる。






話してもいいかな。





「私、、、4月から医学部に入ったばっかなのに、、、






もう勉強にいっぱいいっぱいになってて。





幸治さんに、『医学部入ったんだから、自分の体のことくらい分かるだろう』って言われて、私、そんなこと考えたこともなくて。




医療には興味あるけど、そこまで強い意志があって医学部に入ったわけじゃないから。




なんで医学部入っちゃったんだろうって考えちゃって。





自分の体はどんどん悪くなってくし。      






焦ってばかりだし。





昨日、幸治さんが誰かと私のことを話してる声がして。




幸治さんを悩ませてるって思うと辛くて。  






もう、一緒にいたらいけないんだって思って、、、」






私は一気に話した。





幸治さんは、黙って聞いてくれた。





「俺も、医学部入って、おんなじことを思ってた時期があった。」






えっ?幸治さんも?





「誰もが最初から完璧なんかじゃない。





友達はどうだ?余裕で大学に通うやつはいるか?」






たけるもまいも必死。





みんな頑張ってる。





「みんなそうなんだ。





みんな周りから見たら、自分より頑張ってるって思える。





けどそれは違う。お互いにそう見えるだけで、たとえ優秀なやつでも、医学部となるとみんながいっぱいになる。





頑張って頑張って勉強しないとついていけない。





だけど、俺は、
 


 


かなに頑張れとは言わない。






頑張ってるかなに、そんなことは言わない。





むしろ、息を抜いて。頑張らなくてもいい。





俺をもっと頼れ。」






いつもとは違う。幸治さんの言葉。






優しい言葉。でも、救われた気持ちになった。






「一人で悩んでた。





もっと早く、こうやって話してたら、、、」




と私が言うと。





「今話してくれて充分だ。






もう悩む必要はないだろ?」





うん、何で私、本当にもっと早く、幸治さんに言ってれば良かった。





なんでこんなに恥ずかしく思っちゃったんだろう。
幸治さんにいい風に見られたくて。
幸治さんに嫌われたくなくて。






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