未知の世界3
気持ち
「よしっ!じゃあ、帰るぞ。
寄り道してから。」
と立ち上がりながら幸治さんが言う。
えっ?寄り道?
もしかして、
と私は、ベッドに寝ながら、疑いの目を幸治さんに向ける。
「まぁ、今は言うのやめとくけど。
ちょっとおじさんたちと話してくる。」
といい、幸治さんは部屋を出て行った。
幸治さんとすれ違うかのように入ってきたのは、翔くん。
「聞いた。」
堂々と盗み聞きをしてたことを言う翔くん。
「ぷっ」
思わず吹いてしまった。
「大変なんだなぁ、医学部って。」
と人事のように話す翔くん。
「俺は、大学っていうと遊びに行く奴らしか知らないからな。
けど、かなは違うんだな。」
と私の寝ているベッドの隣で話す。
「俺もかなの気持ち、わからないでもない。
就職して一ヶ月、無知だし、無力だし。
その上叱られてばっかだ。この先、不安なことだらけだ。」
翔くんも就職して大変だったんだね。
幸治さんの言うとおり、私だけが悩んでるんじゃないんだね。
「翔くんと遊びに行くのも、大学入ってから行けると思ったのに。
ごめんね、なかなか行けなくて。」
「いやっ、いいんだ。
俺はかなが大変な時に、遊びになんて行けない。
かなが一生懸命大学で勉強してんだから、俺は邪魔しないよ。
でもよ、俺、望みがなさそうだな。」
「何が?
何が、望みないの?」
「かな、幸治にぃのこと、好きだろ?」
へっ?なんで、そうなるのかな?
「なんでそんなことを言うの?」
と私が返す。
「さっきの会話を聞いてればそうだろ?
幸治にぃに自分の恥ずかしいところを見られたくないなんて。それに、かなの目を見てれば、幸治にぃに想いを寄せてることくらい分かるよ。」
「んなっ!
そんなことないよ!
だって、私は義理の妹でもあるんだよ!」
そうだよ。私はかつて佐藤家に養女として拾われたの。
「今は違うだろ?親戚がどうのこうのって、養女取り消しだろ?」
「まぁそうだけど。」
「もっと自分の気持ちに素直になれよ!」
と言うと、翔くんは部屋から出てった。
自分の気持ちに素直になれって、どういうことよー。
変なこと、言わないでよ。
私はこの時、胸の底から、ゾクゾクというか、ドキドキというか、、、
何か胸の底から込み上げるものを感じた。