未知の世界3

呼吸器内科の研修では、進藤先生がもちろんいた。



でも担当の先生は清水先生と言い、医局でも一番の古株。



古株の清水先生は、おじいちゃん的な存在だった。



私は、この先生を知らない



入院患者よりも外来を多く受け持っていて、さらには、週に何度か違う診療所の手伝いに行くそうで、私の入院中には会うことがなかった。



今回も先の一週間は清水先生が担当だけど、後半は違う先生がなるみたい。




清水先生はとても穏やかな方だった。




私達ができることと言ったら、処置室で治療している患者さんのお手伝い。



医療行為は全くできないので、介助するくらい。



今日は、処置室で何人かの呼吸器を患う患者さんがやってきた。




見ているだけで苦しくなるのは吸入。



突然清水先生が、




「では、患者さんがどのような薬を吸っているのか、実際にみなさんも経験してください。」




と言い出した。



へ?何?



なんでそんなこと言うの!?おじいちゃん先生。。。



全員が、いや私以外が、興味深々という顔つきで吸入器の前に座る



たけるなんて、早くやりたいらしい。



みんなこれがどれだけ辛いか知らないからそんな顔ができるんだよ。




私はみんなの反応を椅子に座りながら見ていた。




スーハー、、、、スーハー、、、、




ん?何も起きない。



誰一人むせることがない。



おかしいな。




「そこの女学生、、、、早くやってみなさい。


こんな経験、できないんだから。」




嫌々、何度してきたか。



私は仕方なく、清水先生に勧められるがまま、マスクをはめて、吸入器の機械のスイッチをいれた。





ガコーーーーン



機械が動き始めた。




始まった。



「スーーーー、、、、ゲホゲホゲホッ。スーーーーー、、、、、ゲッホゲッホゲッホ。。。。。。」




私は案の定むせたので、慌ててマスクを外した。



すると慌てて駆け寄ってきた清水先生が、




「君、大丈夫かね。




もしかして、肺に持病でもあるのね。それとも喘息かね。」




その質問、やる前に聞いてほしかった。



「喘息です。」




はあはあはあ。




まだ息切れしている。




「病院は?」




「ここです。」





「あら、そうだったのか。主治医は?」





「進藤先生です。」




「あら、そうか。なら大丈夫じゃ。」





と言って、離れていった。




何が大丈夫なのか、全くわからない。




隣の椅子に座るたけるは、心配そうに私の顔を見ていたので、大丈夫と小声でつたえた。
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