未知の世界3
夜が来て、お父さんが帰ってきた。
私はお父さんを玄関にお迎えに行って、挨拶をした。
「おお、かなちゃん。来てたんだね。」
と嬉しそうな顔をして私に抱き着くお父さん。
「ゲホッ」
苦しくて思わず咳がでた。
「大丈夫かい?疲れてる?」
とお父さんは私の顔を覗き込んだ。
「いえ違います。大丈夫です。」
と答えると、お母さんがやってきて、
「お父さん、かなちゃんのこと診てあげて。
長旅で疲れてる上、少し走っちゃったから。」
とお父さんに言う。
「そうか、おいで。」
と言ってお父さんに手を引かれ、玄関から近い部屋に通された。
そこはシンプルな部屋になっていて、必要最低限の物しか置かれていない。
「ここは幸治の部屋なんだ。幸治がこっちに来たときのために用意してある部屋だよ。
そこのベッドに腰かけてね。」
と言われ、私は大人しくお父さんの言うとおりにベッドに腰かけた。
「聴診するから、服をあげてね。」
と言われ服をあげる。
深い呼吸を繰り返す。
「少し疲れたかな。雑音が多少聞こえるけど、無理しなければ大丈夫だよ。
普段は誰に診てもらってるの?」
「呼吸器内科の進藤先生です。」
「あぁ、進藤か。よく知ってるよ。
あいつなら大丈夫だな。
こっちに来たら幸治が忙しくなるから、代わりにお父さんがみてあげるからね。」
と優しくそして包み込むように言われる。
自分のことをお父さんだなんて、本当にそういうところが可愛いらしい。
私はそれから晩御飯を食べ、明日に備えてお風呂にはいって眠った。
その日幸治さんは帰ってくることがなかった。