未知の世界3
吸入をするため、進藤先生が私の車椅子を押して、機械の前に行く。
すると幸治さんの携帯電話が鳴って、幸治さんは小児科へ戻った。
吸入を前にすると、気持ちがなえる。
苦しいんだよね、これ。
うまく吸えないから苦手。
「じゃあ、スイッチ入れるから、口に当ててね。」
と言われたので、薬の出てくるパイプを口に当てる。
スイッチが入りすぐに、今度は進藤先生の携帯電話が鳴り、先生は廊下へでた。
私は少しくらいと思って、パイプを口から少しずらす。
そして口を開けながら鼻で呼吸した。
あっ、楽になったぁ。
しばらくして吸入器が止まった。
終わったー!
と思い進藤先生をその場で待とうとすると、
「こぉらっ!それでも治す気があるのか?」
ビクッ!
突然声をかけられ、体がビクッと動いた。
そして、私の車椅子を回して、私の目の前に顔を近づける進藤先生。
「そんなので治ると思うか?」
真面目な顔で言う。
もしかして、、、進藤先生、怒らせた?
怖いよ~。静かにキレてない?
「なんでそんなに治療が嫌かなぁ。」
と聞かれる。
でも私は言葉が出ない。
優しい目が怒ってる。
何も言えないでいると、
「かなちゃん。ちゃんと治療を受けよう。」
と少し優しい声で言われホッとしていると、先生の手が機械に伸び、再びスイッチが入った。
「はいっ。」
と渡されたかと手に取ろうとすると、そのまま進藤先生がパイプを手にして、私の口に当てる。
そして反対の手で、私の背中側から私の鼻をつまんだ。
「うっ、、、」
まさか、ここまで気付いていたとは。
機械は動いていたので、口にもろにパイプから出る薬が口に入る。
「ゴホッ!ゴボゴボゴボゴボゴボっ!」
と、一度咳が出るとさらに追い撃ちをかけるように、次から次へと咳が出る。
喉に薬が入るたびに咳込んでむせる。
「ゲホ、ゲホゲホゲホゲホ!」
うまく息が吸えなくて、苦しい。
「落ち着いて、そんなんじゃ、ずっと終わらないよ。口に薬が入ってないよ。」
もはや鬼化していた。
どうして私の主治医は皆、鬼に化けるんだろうか。
「ゲホゲホゲホゲホ、ヒッヒッヒッヒー。
ゲホゲホゲホゲホ、ハァハァハァ」
苦しいよ。落ち着いてなんかいられない。
顔をパイプから避けようとするけど、先生に鼻をつままれて苦しくて避けれない。
「ハヒッハヒッハヒッ!」
呼吸が変わり、酸欠かと思うくらい息を吸えなくなっていた。