夏の匂い
梅雨
バスの窓には
小さな水滴が細い線のようになって
連なっている。
外の景色は灰色だった。
バスの停まる間に信号を渡る人の顔は
紺色や透明の傘にほとんど隠れてしまっている
その中に
一つ
赤色の傘が目を引いて良い
ああ
色は良い
すごく良い
私も一つおおきなのを買おう
おおきくて目を引くような素敵な傘を一つ買おう
自分の傘は小さいのがいけない
色は気に入っていたのに
それもだいぶ褪せてしまった
そんなことを考えながら
道行く傘たちを吟味していると
もう私の降りるバス停が近づいていた
自分の小さな傘を手に取ると席を立つ