あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
佐川さんの実家は、建設会社を営んでいるらしい。

そして30歳を目途にその会社に跡継ぎとして戻る事を条件に、この会社でいわゆる修行をしていたらしいのだ。

それを知っているのは社長だけ。

そんな事を簡単に話してくれた。

「悪いけど、この理由は俺が辞めてからもここの人には言わないでほしい。自己都合での転職って事にしておきたいんだ。」

佐川さんはニッコリと笑った。

「私にそんな大事なお話をして良かったんですか?」

私は何だか申し訳ないような気がする。

「うん、ちゃんと相原さんには言っておこうと思ってね。」

何気に佐川さんは言う。

「実は急に決まってさ。社長とも相談した上で、今月いっぱいで退職って事になったんだ。」

「えっ?」

今月ももう半ばだ。

本当に急だ。
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